吉祥寺の戦前コンクリート建築(3)

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    さて、前出の西校舎と同じ大正13年竣工なのが旧体育館(13号館)。



    コンクリート柱梁構造の建築で、低く抑えた中央の体育室を2階建付属屋が両側から挟み込んだ構成です。
    入口にはバルコニーを持つ側廊を取付け、その外壁にライト風の装飾が施されています。


    旧体育館入口バルコニー


    旧帝国ホテル 入口庇  明石信道「旧帝国ホテルの実證的研究」より 
    上部の植木鉢兼用の装飾が体育館バルコニーに取入れられている


    バルコニー上部


    両側面の棟も寄棟屋根で庇を出し、ライトの意匠に通じた外観をあらわしています。


    側面妻側 窓枠を45度振って角を表すのはキュビズムの手法でもある

    社交館とも呼ばれたこの建物は、レーモンドのキャンパス計画図を見ると敷地西側の中心に立ち、東側にある校舎群と北側の学生寮とをつなぐ重要な位置に置かれていたのがわかります。
    そのためか左右対称を意識した象徴的な形態となっていました。


    レーモンドの計画した女子大全体配置図 癸瓦旧体育館 GYMNASIUMとある 「創立90周年記念 東寮・旧体育館写真集」より
     



     
    体育館内部 入口バルコニーよりも床のレベルが下げられている
    運動だけでなく、種々の公的な用途にも使用されていたようである


     
    旧帝国ホテル食堂
    梁型や2階窓外がルーフガーデンになっているところなど
    女子大旧体育間の構成に共通点がある


    内部の小部屋にあった暖炉 ライト風にスクラッチタイル貼り

    残念ながら耐震性に問題があるとのことで現在は撤去されました。
    もしも東側の校舎のゾーンに建てられていたら、耐震の能力を理由に解体はされなかったかもしれません。




    旧体育館の北側にあったのが、この地で最初に竣工した学生寮です。

    レーモンドの最初の計画では中央の棟を中心として6つの個室棟が配される、これも象徴的な配置でしたが、実現したのは前面の東西二つの棟で、東寮、西寮として長く使用されました。


    寮、配置鳥瞰図 「創立90周年記念 東寮・旧体育館写真集」より

    西寮は1984年にすでに解体され、東寮と塔をもつ中心棟が残っていましたが、これも先年解体されました。


    東寮には竣工年と思われる1922というプレートが付けられていて、この建物が大正11年の竣工で、大震災にも耐えた貴重なコンクリート建築であることを示していました。

     
    竣工年のプレート 「創立90周年記念 東寮・旧体育館写真集」より

    その中心棟は厨房などに使用され、中央の煙突は8角形の独特な形をしており、やはりチェコ・キュビズムの手法を表しています。内部にはライト風のデザインも残されていました。


    寮中央部 厨房の煙突  キュビズムを採用した特長的形態
    四方に延びる予定であった廊下の断面があらわれている


    内部 暖炉 「創立90周年記念 東寮・旧体育館写真集」より 
    スクラッチタイルや欄間の扱いなど、ライト風を引き継いでいる


    ライト設計 旧山邑邸 1924 内部  淀川製鋼所 F.L.ライトの世界より

    レーモンドの配置図を見ると旧体育館を前面に置き、6方対称にプランニングされた学生寮が奥に控える計画であったことがわかります。体育館の中央部が低く抑えられていたのはこの学生寮の中心を南からも望むことができるような仕掛けのためとも考えられます。



    東寮は関東大震災以前であることが明らかなコンクリート建築で、もし残されていたら、重要文化財に指定された可能性があったのでは思われます。



    東側の本館などのあるゾーンの北側には、林の中に3棟の住居が点在しています。
    これもレーモンドの手になるコンクリートの小品です。

     
    外国人教師館               ライシャワー館

    現在、外国人教師館(1924大正13)、安井記念館(1925大正14)、ライシャワー館(1927昭和2)と呼ばれている建物で、中でも外国人教師館は装飾などもろにライトの手法を受け継いでいます。

    が、建物としては天才ライトのようなキレはありません。それもそのはず、独立3年後、ほとんど処女作といってよいものです。


    外国人教師館 ポーチの装飾


    旧帝国ホテル 入口車寄せ ライト回顧展図録より



    外国人教師館 幾何学装飾の詳細

    しかしながら、レーモンドは渡米後キャス・ギルバートやライトのもとで「修行」していただけあって日本で仕事を始めた初期から、ディテールを納める実力を備えていたことは、残された建物を見てもわかります。


    キャス・ギルバート 18591934

    20世紀初頭のアメリカの建築家。当時アメリカで賞用された古典:アメリカン・ボザール様式の公共建築を多く設計する。ゴシック様式を取り入れた高層ビル:ウールワース・ビルディングやローマ神殿の形体を用いた最高裁判所の設計者として知られている。



    マンハッタンにある、摩天楼の名作ウールワース・ビルディング 1913竣工
    レーモンドが在籍当時の建物


    同、下層部分詳細 ゴシックの装飾が用いられている


    ディテール:細部の設計とは、建物を単なる造形物ではなく、耐候性を長く維持し、快適な使用ができるよう各部分を納めていくもので、それをいかに考え、施工に結び付け、且つ美しくデザインするかという、設計全体において大きなウェイトを占める作業です。

    本館や旧体育館などの大きな建築と比較してみると、レーモンド自体、木造のものは別として、細かいデザインを重ねるような小規模の建物よりも、構造美をスカッと表す大建築の方を得意としていたのかもしれません。



    最後に女子大通りに面する正門です。

     

    これもおそらくレーモンドのデザインです。現在は少し位置を変えて、守衛室などが新築されていますが、写真はそれ以前のオリジナルな形態をとどめている(と思います)ものです。



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