多磨霊園のデザイン(2)

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    墓苑の中心地である名誉霊域中ほどに、霊園のシンボル、噴水塔が建っています。

     
    噴水塔(シンボルタワー)全景

    鉄筋コンクリート造(おそらく)で、昭和5(1930)年の竣工です。

    八角形の塔で上部に同型の八角小塔をもう一段戴いた二段の形となっています。

    アーチ型の開口を各面に設け、八本柱の円筒にも見える姿をしていて、角部分には丸型付柱を配し、上下段共にその頭部も円形に丸めているので、あたかも頂点から水の流れを表しているようにも見えます。


    噴水塔頂部

    脚部は円形基壇の上に建ち、その階段は八角の各点に対応して放射される石の小隔壁によって分割されています。


    塔の足元と基壇

    段は煉瓦ながら施釉されたおそらく塩焼き煉瓦で、これもその当時のものと思われます。
    高さは15mあるとのこと。


    この塔の意匠は明らかにアールデコ様式です。

    パリのアールデコ博覧会が催されたのが1925(大正14)年でちょうどその5年後にあたり、その影響を大きく受けたものと考えられます(ちなみに現在の東京都庭園美術館:旧朝香宮邸の竣工は昭和8年)。

    ・アールデコ
    1925年にパリで開催された「現代装飾産業芸術国際博覧会」通称アールデコ博覧会を機に、パリやアメリカの商業建築や豪華客船高原品などに広まったスタイル。左右対称、幾何学的形体や流線型、ジグザグ文様などが主な特徴。素材もガラスや金属、漆調塗装などを使う。
    日本では旧朝香宮邸が秀逸な例。

      
    アールデコ展のボンマルシェ館   旧朝香宮邸インテリア

    設計者は東京市の技術者かと想像しますが、あるいは井上清かもしれません。東京都に資料が残されていれば明らかとなりますが、現状では当方不案内です。いずれにしても確かなデザイン力の持ち主といってよいでしょう。

    内部に入ると水盤:噴水があり、台座は8本の鋭角柱を束ねた形で、これもアールデコ調の優れたデザインです。残念ながら現在水は出ていません。

     
    内部の噴水詳細

    内部天井はドーム型に造られています。


    天井見上げ


    このように当時のアールデコ建築の良品としてよいと思います。
    80年ですが、塗装など修復していて一応の手入れがなされているようです。


    これとは別の塔も存在します。

    一つはある墓地区画の中央部分に残された小塔です。

     

    高さは4m位でしょうか。これもおそらくコンクリートで、仕上げは化粧モルタルが施されたX型平面の塔です。

    塔の下部では、中心部分の柱から立方体が突き出し、その上部に錆びたパイプが取付けられているので、これも噴水塔だったのでしょうか。あるいは墓参者のための給水施設かもわかりません。
    但し、排水口が見あたらないので、どのように使っていたかは不明です。


    脚部詳細 突出した部分上面に鉄パイプが取り付けられている

    広い円形基盤の上に建ち、X字の四隅先端部分は頂点を尖らせて、高さへの意思を表現し、頂部にはアールデコ調の棟飾りが取り付けられているなど設計者の技量を感じます。

     

    また、前述の給水部分と考えられる立方体は前面をV字型にへこませるなど細部にもこだわったデザインがなされた、モダンな造形物です。

    現在は放置されているようですが、結構古そうで、一見に値します。もし戦前のものであるならば、名誉霊域の噴水塔にもおとらない貴重な近代遺産です。


    これと同じ趣向でデザインされた給水施設も数点存在します。
    いずれも使われず放置されていますが、おそらくコンクリート、化粧モルタル仕上げで、作られた時期も古そうで戦前までさかのぼるかもしれません。


    一つは高さ5尺ほどの十字型のもので、上部に開口をとり、そこに円形水盤が取付いています。



    そこから四方に水が落ちていたようで、その水跳ねを考慮したのか腰には小型の方形タイルが貼られています。



    十字型立方体の各先端面はV字にへこませた意匠となっていて細部にも気をくばっています。



    別のものは、二重の円形基壇の上に取付けられた円形水盤で、これも十字型の立体が支えています。

     

    この十字は基壇に直接乗らず中心の一点で接するようにデザインされ、各先端面もV字型に削られていて、前述給水施設と同じ手法をとっています。


    ほかに、8角形の水場もありました。



    基壇となる部分は矩形の敷石を十字型に配した(おそらく使用者の立ち位置)しゃれたデザインで、本体上部にはコの字型を重ねた意匠のタイルを上下貼り違えた帯状装飾が施されています。


    これらは当方が確認できたものですが、広大な敷地なので他にも存在するかもしれません。
    いずれも放置された状態ですが、どれも良質のデザインがなされたもので、保存措置がなされるとよいのですが。


    また、塔としては、北門(小金井門)広場の中央庭園内にも建っています。


    小金井門広場の塔全景

    これも前述給水施設と同種の十字型平面を形成しその先端面もV字型にへこませた同じデザイン手法がとられています(設計者が同人物か)。また連続して空けられた四角い穴には透かしの装飾が嵌込まれています。



    この塔は北門の広場のシンボルとして大切に扱われているようです。
    現在白く美装されていますが、これも古いものなのでしょうか、そのあたりはよくわかりません。



    この広場には古そうな水場が残っていました。



    中央の水場を、連窓を持つ壁で三方囲い、1段あがった床は古そうなクリンカータイル貼りとしています。



    給水口は3箇所あり、それぞれが立方体で壁面から飛び出したモダンな意匠です。中央部分の給水口は壊れていますが両側給水口が改造されて現在も使用されています。




    このように多磨霊園はその計画の近代性だけではなく、モダン意匠の造形物も残されていて、それらを鑑賞しながら散策することも出来る場所でもあるのです。




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