多磨霊園のデザイン(3)

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    多磨霊園は公園墓地として開園したため、自然環境にも優れ、現在でも多くの人が散策に訪れています。但し文字通り霊園であるため、用地はお墓として多くが使われています。


    各墓地の区画は園内道路沿いでは大きく、奥に入るに従って小区画になっていきます。


    一般に我々がイメージする墓とは立方体の石を上部になるほど細くなるように数段重ねたものですが、園路沿いの大区画墓所には当時の有力者の墓も多いためか、いろいろな形体をしたものがあります。


    墓石の一般的な形


    墓所は人々が葬られている場で、ゆかりの現世人が故人を偲んで参る場所でもあります。
    墓石は埋葬者の生前の事績を表現することもあれば、訪れる人々になにかのメッセージを伝えるためにデザインされることもあります。


    東京都公園協会のサイト、TOKYO霊園散歩では、霊園を都民の共有財産で歴史的資源としてもとらえ、節度を持って墓園を巡ることも進めています。


    今回はその趣旨に従う形で、多磨霊園の墓所及び墓石の優れた意匠を鑑賞してみました。


    ここで取上げたものはあくまでも当方の主観で選んだもので、おそらく墓地所有者の意向をくんで趣向を凝らした比較的古そうなものとしました。

    形に人の作為が加わったものを選び、自然石の墓石は取り上げていません。

    また、墓所内に立入らないよう園路からながめ、写真もそこから撮っています。埋葬者の名前などが明確にならないよう刻まれた文字は修正処理をしています。


    では、それらをこれも勝手に形式によって分類しながら見ていきます。


    まず墳墓型

    日本の古墳も土を盛り上げた墳墓ですが、墳丘を石で覆ったものもあったようです。それを模したような形。鳥居があるものはあたかも貴人の陵墓のようです。

     



    また、墳丘に当たるところを植栽で覆ったものもあります。
     

    ローマの皇帝ハドリアヌスの墓も同じような円形構造物に盛土植栽がなされていました。

    ローマ、ハドリアヌス帝廟復元図 建築学会西洋建築史図集より
    テベレ川沿いにあり現在はバチカンの聖天使城に改修されている

    ローマ人は日本と同じく多神教で、種々の形の構造物を墓として建てていました。人の営みには共通点があります。


    次に宝塔型


    日光 徳川家康廟

    それほど古そうものではありませんが、歴代徳川将軍の墓のような宝塔型:釣鐘型の胴に反った屋根をつけた墓石の形体。

     




    宗教を体現した形

    キリスト教や仏教に見られる造形を取入れ、宗教がそれとすぐにわかるような墓石です。いろいろな形があります。

    まずはキリスト教


    これは共同墓地で古くはなさそうですが、キリスト教らしいものの1例。


    ゴシック教会堂にみられる天にのびる意匠を取り入れた墓石。
    なかなか良いデザインだと思いますが、ヨーロッパにこういうスタイルがあるのでしょうか。

    ゴシック教会堂の例
     
    シャルトル大聖堂(13世紀) ミラノ大聖堂(19世紀完成)
    ゴシック教会堂は天へと伸びるような意匠装飾を持ち、正面に塔を2つ建てる
    双塔形式や、中央を尖らせた尖りアーチを使う

     
    左は小ぶりな品のある墓石ですが、両脇に松ノ木が立っていて教会堂正面の双塔を隠喩しているようにも見えます。
    右は幾何学的な納骨堂形式ですが気品ある姿です


    仏教系。
    日本人はほとんどが仏教なので、墓も一般的に仏教ということになります。その中での1例。


    霊園内には五輪の塔や宝篋印塔が建てられた墓所がたくさんあるのですが、これは宝篋印塔と仲良く並んでいのもので、左側の墓石の形:上部を絞った胴に相輪を頂いたスタイルがなかなか良い感じです。

    相輪:寺院の五重塔などの上部に取付けられた金属製の装飾



    モダニズム型墓石。
    20世紀に起こった、装飾をせず幾何学的形体のみで美を表現する形式です。


    幾何学的ながら古典的要素も残した例

     
    幾何学的立体の組み合わせで出来ている例。
    右側のシンメトリー状に壇が重ねられているものは、ピラミッドを想起させるのか如何にもお墓という感じがします。


    上記とは別に、多磨霊園では一つの広い墓地区画を共同墓地としているものもあります。その中の一例で無縁墓地の墓石(墓石と呼んでよいのでしょう)。


    昭和4年とあるので戦前のもの。中央にゴシック教会堂の出入口を模した銘文を掲げる凹みが設けられています。ゴシック調なのでキリスト教系かとも思いますが脇に卒塔婆が立てられています。


    これもその横の無縁墓地のもの。おそらく戦前のもので、当時一部で流行したライト(建築家フランク・ロイド・ライト:当ブログ「川越洋館列伝(2)参照)風を取り入れてなかなかの出来栄えに思います。

    (4)へ続く。









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