井の頭弁財天と石造物 4

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     さて、江戸市中から井の頭弁財天に詣でるにはおよそ以下の道ををたどったようです。

    まず江戸の西端、内藤新宿から甲州街道を西に向い、高井戸宿の先で北に分かれ、久我山の南部を西進して牟礼村(現在の三鷹市牟礼)に至り、そこから井の頭道に入って行く経路。
    これとは別に青梅街道を西に行き、久我山を目指す方法もあったようです。


    新宿から弁財天までの当時の経路
    赤が甲州道・高井戸廻り : 久我山から人見街道への道は推定
    緑は青梅街道を通る別ルート : 五日市街道から人見街道への道も推定


    現在、井の頭通りの浜田山交差点から、府中市内まで人見街道とよばれる道があります。
    この道はもう少し東の大宮八幡宮の裏手から続いていて、久我山から三鷹市内を東西に走り、府中市内で自衛隊基地に阻まれ途切れています。

    三鷹市教育センターのHPによると人見街道は甲州街道の裏街道で、元は甲州街道の高井戸宿の先、烏山付近から分かれ、現在の三鷹市内を通り、府中の人見村に通じていた道であったとのこと。
    昔から地の人々に使われていた道で、近藤勇の生家跡や墓もあり、三鷹市役所もこの道沿いにあります。中央線ができる前はむしろこの道が市(村)内の主要な交通路でありました。

    弁財天に詣でるのに使われた道はおそらくこの人見街道古道であったと思われます。

    それを示すように今でも旧甲州街道に弁財天への道標が建っています。
    高井戸宿の西、現在の京王線芦花公園駅付近の曲がり角にその道標はあります。
    石の角柱で、建つ位置も昔のままといわれいます。



    正面に「井の頭財天道」と大きく掘込まれ、その下に「これより一里半」とあります。

      
    弁財天と大盛寺とはすぐ近くだが、この記述だと半里の差がある

    側面には「別當所大盛寺迄 一里」とあり、往時の人々はこれを目印に甲州道と別れ弁財天を目指したのでしょう。

    その道を北行し甲州街道新道を超え、しばらく行くと分かれ道に当たります。その分岐点にはがあり、中に庚申塔が置かれています。昔もここから道を西にとり久我山方面に向ったのでしょう。



    久我山方面への分れ道と庚申塔のある祠

    道はそのまま坦々と伸びていきますが、中央高速を潜るあたりから少し北に折れ、玉川上水に沿いながら進みます。
    この道を行くと、いずれは牟礼地区南端を走る下本宿通りとなり、最後には三鷹市の新川地区で人見街道に合流する古い道です。

    途中(久我山南部)には享保15(1730)年の観音塔と安永5(1776)年の庚申塔が置かれています。


    中央に庚申塔、両脇に観音塔が置いてある

    庚申塔は元々もう少し西の井の頭道交差点というところにあったと説明板にあるので、おそらくこれも道標の役目もしていたのでしょう。

    但し、その井の頭道交差点というのが現在のどこに当たるのかよくわかりません。

    その位置不明の交差点を北へ折れると、現在の人見街道にどこかで突当たります。そのあたり、現在の牟礼1丁目8番地に道標を兼ねた石碑が建っています。


    撮影時道路境界工事中だが、たぶん位置はそのまま

    一見して判別しにくいのですが「南無妙法蓮華経」の題目と「右 是より古く帰ん寺道」「左 是よ里 ふちう道」と刻まれていると説明文にあります。


    石碑側面 道標になっている

    「古く帰ん寺道」というのは、この人見街道を進んだ先で分かれる連雀通りを行くと小金井を過ぎ国分寺へ至るのでそのことを示しているのでしょう。「ふちう道」とはここから人見街道へ入らずに道を戻り、下本宿通りをそのまま進むと前述の通りやがては人見街道と合流して府中に至るのでその意味だと思われます。

    こうして人見街道に出た後はまた西へと進み、現在の牟礼交差点で街道と分かれ、井の頭道(現 井の頭公園通り)に入り、ようやく弁財天に至ったようです。


    現牟礼交差点 左に行くのが人見街道 斜め右が井の頭道
    中央角に供養塔と地蔵が建っている

    この街道との分岐点には地蔵道供養の塔が建っています。


    供養塔と地蔵 以前は神明社に移設された燈篭も一緒に建っていた

    道供養の塔は文化9(1812)年に建てられた角柱で、文字通り多くの人に踏まれる道を供養しているのです。隣に立つ地蔵は古そうですが年代は不明です。

    ここには道標となる燈籠が並んで建っていました。現在近くにある牟礼神明社にそれは移築されています。

     
    移築された燈籠            胴部分の彫刻

    幕末嘉永3(1850)年に造られた常夜燈で、牟礼村の巳待講という信仰グループが建てたもの。台石には「巳待講」と彫込まれています。上部には龍の浮き彫りがなされています。

     
    台石の彫込み(道標)        牟礼の鎮守 牟礼神明社


    以上が甲州街道から井の頭へ至る、昔の道程とそこに残る石造物です。
    当方が現在のところ確認しているものですが他にもあるかもしれません。

    牟礼1丁目の石碑の説明看板に江戸時代の付近の地図が掲げられています。それに上記の位置を書き込むと図のようになります。





    さて、もう一つの経路、新宿から青梅街道を経由していく方法もあったようで、途中堀の内の妙法寺に寄り、弁財天に至った江戸時代の記録もあるとのことです。


    江戸名所図会 妙法寺

    その詳細については当方不明でありますが、青梅街道の高円寺から五日市街道を経て、どこかで南下し人見街道に出たものと想像します。
    中央線阿佐ヶ谷駅から鎌倉道とよばれる古道が南へ伸びており、青梅、五日市両道を横切り大宮八幡宮に至るので、ここを通った人もいたかもしれません。
    今でも八幡宮南の道はそのまま人見街道に続いています。


    江戸名所図会 大宮八幡宮

    そこから人見街道を西へ進むと神田川を渡ります。そこが現在の久我山駅ですが、その少し手前に街道から東に分かれる道があります。その分岐点に庚申塔が建っています。


    庚申塔の建つ分岐点 左が人見街道

    八代将軍吉宗の頃享保7(1722)年のもので、道標を兼ねていて、側面に「これよりみぎいのかしら三ち」「これよりひだりふちゅう三ち」と彫込まれています。

      

    左はそのまま人見街道ですが、右の道はカーブしながら神田川の北側台地を西へ伸びていきます。但しその先は、現在住宅街の道になっていて、あちこち曲りながら行けば確かに井の頭までつながっている状態です。昔は畑の中の細道であったのでしょうか。

    ここで曲らずさらに街道を進めば、前述の牟礼1丁目、高井戸よりの古道に合流します。その牟礼村の入口(現在の三鷹市との境)で、今度は玉川上水と交差します。
    その橋のたもと:東側には欅の木とがあり小さな庚申塔が納められています。元禄13(1700)年建立との事です

      
    牟礼橋と欅の木、祠 
    上水側道を拡幅する計画が進んでいて、この景観はなくなるかも


    この橋は古くから石の橋であったようで、それを示す石碑が建っています。それには「石橋建立供養の碑」と刻まれ、宝暦7(1757)年の年号があります。側面には橋が寛政9(1797)年と嘉永2(1849)年に架け替えられたことが後に刻字されています。

      
    牟礼橋供養碑                どんどんはし 「右ふちゅうみち」と彫ってある

    その横には「どんどんはし」と大きく彫られた道標も並んで建っています。
    「どんどん」とは玉川上水の豊富な水勢を地元の子供らが呼び習わした言葉であるとのこと。ちなみに現在の橋の名は牟礼橋です。

    現牟礼橋の上流側隣には古い橋が残っています。煉瓦造りのアーチ橋で欄干はコンクリート製。スタイルが洋風なので明治時代以降のものと思います。

      

    残されている古い橋  木々の間から煉瓦のアーチ積みが確認できる

    人見街道をこの橋まで来ればすぐ先が甲州道からの参詣路との合流点なのであとは前述の通り、牟礼村を進み井の頭道に至ります。






    以上の道程のほかに、弁財天の道標が何点か残っています。

    一つは元文5(1740)年のもので、甲州街道調布付近にあったと思われているもの。現在は調布市内の民家に移築されているらしい。

    他には吉祥寺の五日市街道と現吉祥寺通りとの十字路に建っていたもので、何度か移された後、元位置の傍、武蔵野八幡宮境内に置かれているもの。
    天明10(1785)年の建立で「神田御上水 井の頭財天」と彫られた石柱の道標

      
    八幡境内入口脇に古そうな庚申塔と並んで建っている


    最後の一つはやはり吉祥寺通り万助橋付近にあったと伝えられている道標で、明治31(1898)年のもの。現在は小金井の江戸東京たてもの園内に設置されています。


    江戸東京たてもの園内


    以上、往時の風景とは変わっていますが、いまだ途中途中に当時の痕跡が残されており、公園内の弁財天は言うに及ばず、そこへの古道を訪ね歩くのも(お閑の方)一興ではないでしょうか。

     



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