木造住宅の耐震補強 Ver1(3)

0
     ・耐震補強の実例

     では、今まで述べてきた耐震化策について、当設計室で行った仕事の中で、耐震補強の実例をあげながら解説していきたいと思います。


    1.地盤について

     地盤が良好かどうかは、まずその土地の状況を観察、調査することから始めます。
     造成地であれば盛土部分は軟弱であることが多く、川などを埋め立てた土地や窪地も良好とはいえません。これらは古地図や地名(久保、窪などといった名前)からも推定できます。


    盛土の例 左:造成地 右:窪地

     土地の状況が明らかに疑わしいときや改修費用に余裕があるときは地盤調査を行います。
     この調査は土地の反力:地耐力を測定するもので、測定数値は地耐力が1崚たり何tあるかで表記されます。硬い地盤は地質にもよりますが、粘土やローム層の場合1屬△燭蝪隠娃以上あることとされています。5〜10tではやや軟弱、3t以下だと軟弱地盤となり、何か対応策が必要になります。


    調査によって得られた、地盤状況を示す断面図の例
    この場合は表土より3.5m以上の下部に硬い支持層がある

     住宅の地盤調査でよく行われるものに、スウェーデン式地盤試験があります。
     上図の例では調査によって土地が盛土の造成地盤であることが判明し、その下の支持層までとどく杭などの対処をしなければならないことが明らかなっています。


    スウェーデン式地盤調査機械


    2. 基礎について
     
     既存の住宅で築20〜30年ぐらいであれば、まずは間違いなく鉄筋コンクリートの基礎が施工されています。
     
     基本的に基礎を補強することは手間を要し、費用もかかります。たとえば基礎がない場合、基礎を施工して建物を安定させたいのですが、建物全体を一定期間浮かせて(揚屋:あげや という方法)基礎を施工するといった大工事になります。
     これは建物に文化財的な価値がある場合などに行うこともありますが、一般住宅では工費がかかり判断に迷うところで、建て替を選択する方が安いことも多々あります。
     
     建物一部に基礎が抜けていたり、一部が軟弱地盤にかかっていた場合など、費用その他の状況がゆるされれば基礎を挿入することもありますが、いずれも現場の状況をよく検討することが必要です。
     また、耐震壁を加える場合、その下部には土台と基礎が必要になります。そのためには新たに基礎を加える場合もあります。


    基礎石の下にコンクリートの基礎を加えて安定させる例


    建物一部に基礎を挿入する例 : 型枠を造りコンクリートを打設している


    3,4.柱や壁のバランスの良い配置

     柱がバランスよく配置されていることは建物の一部に弱点をつくらないようにするためで、非常に大切なことです。また建築基準法でも耐震壁はバランスよく配置しなければならないとされています。
     建物一部に不相応に広い部屋があったり、上下階の位置に大きなずれがあるといったアンバランスを解消するには、プランの許す限り柱や壁を挿入し、また上階の壁を受ける柱や耐震壁を1階に新たに設置して構造的欠陥を補うことが必要になります。
     

     以下は耐震壁などを挿入して建物を補強した例です。

    A邸:宮城県仙台市

     
    この住宅は築約15年のものでした。A氏夫妻が購入を期に当設計室にて改装と耐震補強を行いました。

     まず平面の概略です。(下図参照)」
     東側に広いリビングがあり、開口部が東南に大きくとられているのがわかります。開口部が多いと明るく風通しの良い空間になりますが、残念ながら地震には不利といえます。
     また、1階南側は下屋をとり、開口を設けて縁側とし、2階外壁を奥にずらしたよくあるスタイルとなっていますが、結果として2階外壁がほとんど中に浮いている状態です。(図中矢印)
     
     特に今回は西側の2階外壁もずれていたため、2階の隅を支える柱が一階に到達していないという構造的欠点があり(図A部分)、これはどうしても解消する必要がありました。


    A邸工事前 1階平面図


    A邸工事前断面図

     広縁があることは日本のような高温多湿の夏を乗り切るための有効な方法で、下屋がある建物シルエットも日本的な情緒をかもし出します。
     ただ、これによって2階の荷重を支える壁がどうしても不足してしまう宿命があります。(図中矢印)

     そこで補強の方針として、まず1階広間の開口を少なくして耐震壁を増やし、また2階の外壁、個室を受ける柱や壁(これも耐震壁となる)、を1階に設置し構造的強度を補うこととしました。
     
     新たに設置する壁は当然基礎も設置して荷重を地盤に伝えるようにする必要があります。そこで既存の基礎に連結しての基礎工事が発生しますが、基礎が追加されたことで、建物下部が強固になり、その上部に土台と柱を据え、スジカイで補強して耐震壁が構成できます。


    A邸工事後1階平面図 :2階壁を受ける壁(耐震壁)設置


    柱、耐震壁挿入施工中 ; 基礎も追加している

    1階広間に挿入された耐震壁(前後2箇所)
     
     結果としては建物内部に壁が増えることになり、プランには変更が生じますが、オーナーの了解を得ることができる範囲でした。
     竣工後、宮城地震と東日本大震災で震度6の揺れに数回見舞われましたが建物は無事で被害は免れています。


    5.建物の重心

     ここでは近年実例の多いロフト:屋根裏収納についての考察です。
     一般的な木造住宅は1階か2階建ですが、高層の木造建築をつくることも不可能ではありません。たとえば五重塔や城の天守閣は木造高層建築で何百年にわたり存在しています。


    醍醐寺五重塔 : 京都、平安時代竣工
     
    金閣寺 : 昭和再建、室町時代の3階建宮殿施設の例

     建築基準法では3階建以上の建物には構造計算によって安全を確かめ、防火的にも一定の配慮をすることが要求されますが、木造でも計算で安全を確かめるなど法的に同意を得ることが出来れば3階建てを作ることは可能です。

     但しロフトについては対象階の面積の1/2以下で天井高さも1.4m以下ならば階としてカウントしないという緩和規定があり、これを遵守する限り2階建として、法的に取り扱うことが可能となります。
     
    ロフト付き住宅の例 : 右は違反建築となり、耐震的にも不利

     但し規定をオーバーし、たとえばロフトを居室とした場合、実質的には3階建となり、建物にかかる重量も大きく、同時に重心が高くなるなど構造的にも不安定とならざるを得ません。また法的には違反建築と扱われ、結果として建主が不利益を被ることとなります。  
     このほかに床下収納を拡大解釈して、地下室に近い空間を設ける例もありますが、プランによっては地下室上の柱は基礎に到達せず、構造的弱点になるので注意を要します。
     
     もし不適格なロフトがある場合は最低でも収納物を少なくし、荷重を軽減して建物の安全度を少しでも回復する必要があります。


    calendar

    S M T W T F S
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    28293031   
    << October 2018 >>

    selected entries

    categories

    archives

    links

    profile

    search this site.

    others

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM